森川智之プライベート・コレクション

森川智之「歌」(2003年)レヴュー

(2004/2/1現在)

2003年

GIVE IT TO ME STRAIGHT [03.11.16掲載]

作詞森川智之
作曲広瀬充寿
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、ハイトーン、ハードロック
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

「JOLLY ROGER」というアルバムのトップバッター、ということで、 「TAKIN'」と聴き比べてみるのも面白い。 たぶん、この8年ちょっとの間に、森川さんが身につけた(?)余裕や自信が、 はっきりと見えるだろう。 それが、このアルバム全体を、端的に表しているのではないだろうか。
多くのファンは、パワフルなロックを期待して、このアルバムを聴き始めると思うが、 その期待は裏切られない。これでもかというほどのハイトーンヴォーカルが、 確実に刻むリズムに乗って、突き刺さるほどに響く。綺麗に澄んだシャウトもよい。 サビのギターリフも、オーソドックスなスタイルで、冒険はないが、 そのぶん安心して聴いていられる。
歌詞は、意味不明なところも多い。どちらかというと、感覚で曲の上に並べた感じ。 いろいろと深読みすると、けっこう面白いストーリーが作れるのかもしれないが。 少なくとも、若者特有のアンチテーゼや悩みをテーマにしていた以前の曲たちとは、 はっきりと一線を画す感じ。日常がテーマ? というのだろうか? 「潮時」とか「我慢」とかの言葉には、ちょっと驚いた。 曲はすごくロックなんだけどなあ。これもロック、なのかなあ。
声の遊びはたくさんある。 メインヴォーカルは、最初から最後まで張ったハイトーンでパワフルに押してくるが、 コーラスはいろいろな声を使っていて、声のトーンの違いが堪能できる。 あちこちにいろいろな声の言葉がちりばめられているのも楽しい。 とりあえず、「JOLLY ROGER」のイントロダクション的には、 それなりにキャッチーなのではないだろうか。


JOLLY'S PARTY TONIGHT [03.11.23掲載]

作詞森川智之
作曲広瀬充寿
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、中音域高め、少し渋めのロック
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

「渋い」なんて言うと、渋め好きな人に叱られそうだなあ。でも、 そんなこと言ってたら、「渋い」なんて、どこにも書けなくなってしまう(笑)。
とにかく、ガンガンに押してくる音ではないが、リズムセクションが幅をきかしていて、 ちょっとやそっとでは飛ばされないぞ、という感じがする(どんな感じや)。 ヴォーカルやコーラスにベースラインをはっきりとシンクロさせて、 「太い」感じの音が心地よく身体を揺さぶる。 メロディラインも、派手ではないが緩急付けた展開で、 コーラスをうまく使って効果的に聞かせてくれる。
歌詞は、この曲も、もうすでに「生き急ぐ」若者ではなくなってしまったんだなあ、 という感慨を感じざるをえない。かといって、若さを否定しているわけではなく、 「余裕」を持ってしまったことや、「生きる」ことのしがらみを自覚しつつも、 それを完全に受け容れているわけでもなさそうなところが、ちょっと救われる。
ヴォーカルは、メロディもサビも、中音域からちょっと高めあたりの声で、 特に音域が広いわけでもない。が、これだけ同音域の声をずっと使っていて、 メロディラインの変化等によって声の色を変えていても、どの声も濁らずに、 横に広がらずに同じ太さで抜ける声なんだ、ということがよくわかる。 そして、それを埋め合わせるかのように、イントロからシャウトを聴かせてくれるし、 エンディングには、それまでの欲求不満を発散するような素晴らしいハイトーン。
全体的におとなしめではあるが、落ち着いた中に若さや情熱が見え隠れする、 という意味では、中年の渋さ、といった感じの魅力か。(こらこら(笑))


CUTTIN' OUT [03.11.30掲載]

作詞森川智之
作曲さかもとえいぞう
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、ハイトーン、ハードロック
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2007/8/8 森川智之ディナーショー 冬の陽の暖かさに包まれて in 赤坂プリンスホテル (ライヴ・バージョン、メドレー) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

ドラムも、ベースも、ギターさえも、リズムを刻むことに命をかけたようで、 アレンジは渋めだが、音はギンギンに派手。さすがに坂本英三、という感じ。 英三さんは作曲だけで、編曲は広瀬さんなわけだが、曲自体が渋いけど派手なのだ。
不協和にさえ聞こえる、単調なリズムに、派手なメロディとヴォーカルが乗っかる。 森川さんにしては、持って回ったような歌い方だが、 そうでもしないと声が負けてしまう、そんな感じの、癖のある作りの曲。 バリバリのロック好きにも、満足できるのではないだろうか。
歌詞も、このアルバムにしては、観念的で反抗的。 こういう、すべてを「否定すること」から入る青臭さこそ、 常に「体制への反抗」を旗印に掲げてきた若者たちの音楽としての魅力と言える。 曲の重さ派手さと相俟って、一筋縄では行かない、挑戦的なまなざしを感じる。
是非とも、英三さんのヴォーカルでもこの曲を聴いてみたい。 さすがに本職のヴォーカリストなだけあって、森川さんのような素直な歌い方ではなく、 あの、いやらしいほどに自己主張の強い(誉め言葉)ヴォーカルだと、 すごく違った魅力が聞こえて来そうな曲なのである。 そして、「GARDEN OF EDEN」のように、 いつか競演してもらえたら、という夢は絶対に捨てられない。 あのふたりの声で、あのサビのハイトーンシャウト(しかもハーモニーだ!!)が聴けたら、 それだけでたくさんのものを投げ捨ててもいい、かもしれない(笑)。


BREAK AWAY [03.12.07掲載]

作詞森川智之
作曲広瀬充寿
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、中音域から高音域、ハードロック
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

「JOLLY ROGER」の中でいちばん好きな曲。
このアルバムの全体的な印象として感じる、安定感・余裕・落ち着きといったものが、 「ロック」という音楽に求めるものとしては、とても疑問に感じるのだが、 そんな中で、この曲は若くてストレートで危なっかしい。私が求める魅力そのもの、 といった感じ。どうも、かなり昔の曲を、今回リメイクして収録したらしい。 つまり作ったのは、「今の」森川智之ではなく、何年も前の彼だったわけだ。 そりゃ、好みにぴったりだよな、その頃の歌を聴いて彼を好きになったんだから。
私だけではなく、この曲が好きという人は多い。 曲調がわかりやすくとっつきやすい、ということもあるだろうと思う。 それでいながらカッコよく決めてくれるので、非常に「ロック」な魅力全開である。 リズムがはっきりしていて、乗りやすい。適当なタイミングでブレイクが入るので、 ライヴで聴いていても、観客も同調しやすく、一体感を感じやすい。 ステージパフォーマンスも映える構成で、ライヴ向きの名曲でもある。
一途さと切なさを感じさせるラブソングで、意識しないうちに胸を打たれている感じ。 一生懸命さやもどかしさが、ダイレクトに伝わってくる感じがする。 ひとつひとつの言葉はなんということはないが、1曲聴き終わってみると、 すごく素敵なプロポーズの言葉をもらったような、やわらかい気持ちになれる。
しかし、「hight way」って何なんだろう? 「way」はともかく「hight」は、ランダムハウスでも適当な用法が載っていない。 意味的には該当するものもないではないが(一般的ではない)、品詞的に少しおかしい。 最後の「t」も発音している様子がないし、まさか単なるミスタイプ? それともお得意の、複数の意味をかけた言葉だったりするのかしら。


C.C. [03.12.14掲載]

作詞森川智之
作曲森川智之
編曲広瀬充寿
曲調ミディアムテンポ、シリアス、中音域低め、ホンキートンク
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

森川さんが「反省会の歌」と呼んでいる曲。軽いホンキートンクテイストの曲調に、 ちょっと投げやりな印象を受けるヴォーカルで、気怠げな雰囲気がいい感じ。 森川さんがエアロスミス好き、と聞くと、すごく納得できる曲調だけど、 ビートルズがルーツの自分にとっては、ちょっと路線が違うかも。 けっこう好き嫌いがはっきり出る曲なのではないだろうか。
歌は、わざと投げやりに作った感じの声で、声の綺麗さや伸びは楽しめないが、 歌自体よりも、含み笑いとかの合いの手のほうが、うれしい人も多いかもしれない。 このアルバムは、こういう声の遊びが多く取り入れられているが、 この曲もそれを多用しているほう。なんとなく聴いていると、 今まで気付かなかった言葉が急に耳に残って、新しい発見にうれしくなったりする。
最初に歌詞を聴いたときには、「じっとしてる」ということに、 限りない違和感と怒りを感じたものだった。笑ってくれるように努力して何かをするか、 わからないならいいよと席を立つか、どちらかだろう、と思ったから。 でも、このアルバムが出てから約1年、なんとなくわかったような気がする。 好かれている自信のある人間の(無意識の)傲慢さ、というものなのかもしれない、と。 結局は惚れた者負けなんだ(笑)。


UNDERGROUND-MAN [03.12.21掲載]

作詞森川智之
作曲森川智之
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、コミカル?、シャウト、がなりっ放し
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

声の遊びという点では、この曲が筆頭だろうか。 最初から最後までエフェクトをかけた声なだけでなく、 もう合いの手という言葉ではくくれないくらい、いろんな言葉がちりばめられている。 ライヴで「お湯わかして」って言ってるところもあるから探してみて、 などと言っていたが、本当にいろんな言葉が発見できるのは面白い。
メロディラインはあるのかもしれないが、ないかもしれない(笑)。 演奏もリズムも単調だが、それが逆に遊びまくったヴォーカルを際立たせている。 歌詞は、自分という存在に対する幻滅と焦燥感を歌っている、のかもしれないが、 何か言葉らしきものをどなっている、という印象しか残らない。 でありながらも、ちゃんとシャウトしてたりするところも、遊び心の一部だろうか。 それともロッカーの魂が、最後までロックであり続けることに固執した結果なのか。 もしかしたらこれが、「魂の叫び」という意味で、究極の「ロック」なのかもしれない。 いずれにしても、これをライヴで魅力的に演奏するのは、 よっぽどの「(ヴォーカルを含む)バンドの色」を作らないと難しそう。
歌詞カードに書かれた歌詞とは、意図的に(?)違う歌詞を歌っている箇所もある。 間違えて歌ったのを、これいいじゃん、ということで採用になったらしい。 全体的にそんな感じの、ノリが命の曲。何も考えずに楽しむのがいいかと。


JOLLY ROGER [03.12.28掲載]

作詞森川智之
作曲広瀬充寿
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、高音域、ポップス
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

「JOLLY ROGER」(海賊旗)という意味からも、某漫画を思い浮かべた人は多い。 アニメ化されていることもあって、その主題歌に、と思った人も少なくないだろう。 林原めぐみに至っては、ラジオ番組でタイトルまではっきり出して、 制作会社に「よろしく」と言ってくれたぐらいだ(笑)。 確かに、今まで使われている曲と、アレンジ等も似ている感じではあるが。
そんなことを思われるぐらいだから、「いかにもロック」という感じとは違い、 かなりポップな曲調で、メロディラインもわかりやすく覚えやすい。 サビでの伸びるハイトーンヴォーカルも健在で、キャッチーという意味では、 タイトルソングとしての役目を充分に果たしていると言えるだろう。 ちょっと甘えた感じの歌い方もあり、「森川さんのヴォーカル」好きにもうれしい。 しかし、サビの英語コーラスが未だに「チャンチャラチャン」としか聞こえないのは、 どうしたものか。(笑)
明るく希望いっぱいのように思える曲調や声のトーンとは裏腹に、 希望を打ち砕くような歌詞に驚かされる。 でも、逃げるのではなく、絶望を忘れて希望を見出すのでもなく、 絶望をずるずると引きずったままの「船出」に誘う、 なんともせつないファンタジックな情景が繰り広げられる。 これを前向きと取るか、後ろ向きと取るかは、感じ方それぞれだろう。
確かに統一感はないアルバムではあるが、マイナー色が強い曲が多いだけに、 これだけわかりやすくポップな曲は、逆に浮いて聞こえなくもない。 「HEAVEN'S DOOR」にキャラソン投げ込んだ感じ。(笑)


DREAM OF CRADLE [04.01.11掲載]

作詞森川智之
作曲森川智之
編曲広瀬充寿
曲調スローテンポ、シリアス、中音域、バラッド
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2007/8/8 森川智之ディナーショー 冬の陽の暖かさに包まれて in 赤坂プリンスホテル (ライヴ・バージョン) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

「HEAVEN'S DOOR」のバラッド3連作を思い出させる曲だ。 でもあの頃のような、「一緒に傷つき、泣き疲れて眠る」という感じではなく、 傷ついた相手を余裕をもって見守り、すべてを心得た笑顔で導く、という感じがする。 それだけ大人になったのね。そのぶん、対等な一体感は感じられないけれど。
バックは2本のアコースティックギターのみ。静かにリズムを刻むサイドギターに、 ひかえめなリードがからむ。80年代ぐらいの小綺麗なフォークのような構成だが、 響きが垢抜けていて、生活臭は感じられない。空気を震わせるあたたかな音が、 夢と心象風景に厚みを作り、美しく切り取られた映像を思い浮かばせる。
深い響きのやさしい声で、包み込むような包容力のあるヴォーカル。 ちょっと頼りなさを感じさせる色がほとんどないのは淋しいけれど、 この曲としては、色っぽさよりも、やわらかさとあたたかさのほうが似合うので、 それはそれで魅力的である。落ち着いていて、さりげない自信と強さも感じさせるが、 あくまでもやさしく、低めだったりドスをきかせたりすることはない。
やさしい気持ちになりたいときには最適。それも、一緒に切り拓いて乗り越えようね、 と手をつないで同じ方向を眺めるよりも、全部任せてごらん、きっとうまくいくよ、と、 オトナなリードをしてくれる相手のほうが好みの人には、諸手を挙げてお勧めしたい。 泣きながら眠っても、きっと目覚めたときには、見えないけれどあたたかい腕が、 不安も何もかも全部、きれいにぬぐい去ってくれていることだろう。そう思おう。


GET A LIFE [04.01.18掲載]

作詞森川智之
作曲城戸脩
編曲広瀬充寿
曲調アップテンポ、シリアス、高音域、ポップロック
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

なんとなく、この曲はあまりカラオケとかで歌いたくないな、と思ってしまう。 特に汚い言葉を使っている、というわけではないのだが。 別に歌詞が美文である必要は全然ないのだが、歌っていて気持ちのよくない歌詞は、 なんとなく後味がよくない。ま、詞を聴かなければいい、といえばそうなのだが。 呪文だと思っていても、ハイトーンは楽しめるし。
英語詞のフレーズの、すべるようなヴォーカルと、音の加工のしかたは、 ちょっとビートルズっぽくて、なかなかよい。すごく好みだ(笑)。 コード進行やコーラスの和声も、なんとなく親しみやすい感じ。 ハーモニカを使ったちょっとレトロな雰囲気のイントロも、控え目なリードギターも、 単調に徹するリズムセクションも、ハイトーンヴォーカルを際立たせている。
サビ以降の、これでもかというハイトーンも、綺麗に響く。 高く張りながらも、声の響き方をくるくる変え、表情が豊か。 意外にも、全体的に明るいトーンの声で、日本語が理解できなければ、 こんな内容だとは思わないだろう。全部英語詞にしてみたらどうだろう。(爆)
この曲の彼女には、心から「ご愁傷様」と声をかけたい。自業自得とはいえ、あの、 ものすごく綺麗な(フィルターかかりまくり(笑))アルカイックスマイルで、 冷たくきっぱりと拒絶されるんだろうなあ、と思うと、 絶対に自分はその立場に立ちたくない(笑)。 どんなに美しかろうと、絶対そんな笑顔を向けられたくはないものだ。


LONG [04.01.25掲載]

作詞森川智之
作曲TWIN SHIEKES
編曲広瀬充寿
曲調ミディアムテンポ、コミカル?、中音域、曲調は…なんだろう
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2007/8/8 森川智之ディナーショー 冬の陽の暖かさに包まれて in 赤坂プリンスホテル (ライヴ・バージョン) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)
2012/7/25 森川智之ディナーショー 冬の陽の暖かさに包まれて2012 in グランドプリンスホテル新高輪 飛天の間 (ライヴ・バージョン) (DVD)

森川さん自身は、「カッコいい森川智之とは違ってて、 びっくりしたでしょ」と言っていたけれど、ある意味、すごくカッコいい曲ではある。 初めて聴いたときには、確かに、いったい何なんだ、と面食らったけれど。 聴いているとけっこう味が出てくる、スルメみたいな魅力。
どうしても歌詞に引きずられがちだが、掛け合いの構成になっているサビなど、 リズミカルで、派手さはないがいい気持ちに盛り上げられる、 なかなかライヴ向きの曲。森川さんのお気に入りの曲でもあるらしい。
全体を通して特に、ベースの動きがとても印象に残る。 歌うベース、というか、リズムセクションにとどまらない、自在に跳ね回る感じ。 ベースは音が太いので、こういうベースは前に出すぎると鼻につくこともあるが、 ちょうどいい具合のバランス。自己主張する音ではないが、一度気になり始めると、 ヴォーカルそっちのけでついついずっと追ってしまう。ギターでリードを取るよりも、 裏地に凝った服のような渋い派手さを感じて、ニヤッとさせられる。 ベースのMAGUさんの作曲だそうだ。だからなのかな? MAGUさんには、ライヴで、 「まさかこんな曲になるとは思ってなかったでしょ?」と訊き、MAGUさんも頷いていた。 確かに、もうちょっと小粋な曲になると思っていたことだろう。
森川さんのヴォーカルも、「ロック」と肩肘張るのではなく、 自然体で肩の力を抜いた感じで、リズムがはっきりしているにもかかわらず、 すごくのんびりゆったりと聴ける。しかも、こんな(!!)歌なのに、 なんだかえらく色っぽく声を裏返したりするところがあるんだ。
森川さんはファンのことを歌った、と言っているが、最初は、というか未だに、 絶対に檜山さんのことだ、と勝手に確信していたりする。(笑)


I LOVE YOU [04.02.01掲載]

作詞森川智之
作曲230
編曲広瀬充寿
曲調スローテンポ、シリアス、中音域からちょっと高め、バラッド
収録 2003/1/16 JOLLY ROGER(CCCD)
2003/5/28 JOLLY ROGER LIVE 2003 in CLUB CITTA' (Live Version) (DVD)
2007/8/8 森川智之ディナーショー 冬の陽の暖かさに包まれて in 赤坂プリンスホテル (ライヴ・バージョン) (DVD)
2008/4/16 JOLLY ROGER(再発売)

8年経つと、「HEAVEN」がこれになるんだ。
ストリングス系の音と済んだピアノの音が、最後にしっとりとした余韻を残す。 ライヴでいえば、イントロが逆光に浮かび上がるヴォーカリストの影で、 心にしみ入るように歌い上げ、拍手につつまれて幕、という感じ。
物静かな安らいだ、広がりのある声だが、張っているわけでもなく高くもないパートで、 微妙にひっくり返るところなどが、ちょっと甘えた感じを感じさせる。 あふれんばかりの愛と、穏やかに愛されている自信とが同居した、 なんというか、もう勝手に幸せにやってなさい、みたいな感じ、でもある。 愛犬アクセルへの愛を歌った歌だ、と本人も公言している。 確かに、耳を澄ましながらドアを見つめて、じっと彼氏の帰りを待つ彼女は、 ちょっと願い下げかも(笑)。でもどうしても、この圧倒的な愛の波に、 自分を置きたいと思ったら、ちょっとしっぽを振る練習をしてみてもいいかも。
しかしながら、個人的には、このアルバムを通して、ある意味、この曲の歌詞が、 いちばんショックだったかもしれない。 常に何かを求めて、今いる場所からまた違うところへ旅立とうとする姿が、 私が森川智之というヴォーカリストに求めていたものなんだろうな、と思う。 「帰って来る場所」を確保したうえで、「ちょっと出かけて」みるような、 そんな気持ちでの、いろいろな旅立ちや挑戦は期待していなかった。 「走り終えたら帰るから待ってて」と目尻を下げる彼を、 「ロック・ヴォーカリスト」として愛していけるのだろうか。 書いた本人は、もっとミクロな意味のつもりだったのかもしれないけどね。 それは、聴いた人の数だけある感じ方のひとつだから、しかたない。
まあでも、そんなことを考えなければ、愛とやさしさと安らぎにあふれた、 自分にとっていちばん大切なものを手に入れた満足感がひしひしと感じられるので、 あたたかい気持ちになれることだろう。


きよしこの夜 [03.10.05掲載]

作詞ヨゼフ・モーア,訳詞:柚木康
作曲フランツ・グルーバー
共演ALL MEMBERS (合唱)
曲調スローテンポ、中音域から高め(たぶん)
収録 2003/3/26 ネオロマンス・フェスタ4 LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン) (DVD)
2003/3/26 ネオロマンス・フェスタ4in大阪 LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン) (DVD)
備考「アンジェリーク」シリーズのエルンストとして、になるのだろうか。

知らない人はほとんどいないであろう、ものすごく有名なクリスマスソング。 クリスマスをテーマにした「ネオロマンス・フェスタ4」で、話のしめくくりに使われ、 会場とともに合唱したもの。特にソロパートがあるわけではなく、 みんなと一緒に歌っているのに参加しているだけ。
前年の同じような時期(でもないんだけど)に歌った「赤鼻のトナカイ」は、 ビデオ収録されなかったのに(エンディングがなかったので、 ちょっと尻切れトンボな印象)、正直、この曲が収録されたことに、少し驚いた。 作詞・作曲者の没後50年を過ぎているからなのかな(著作権が切れる)。 訳詞者は、まだ50年経ってないみたいなんだけど。


カルビ丼音頭 [03.11.02掲載]

作詞木村京太郎
作曲岩崎元是
編曲岩崎元是
曲調ミディアムテンポ、コミカル、中音域、音頭
収録 2003/4/21 キン肉マンII世 Round.8 (替え歌バージョン) (DVD)
2003/6/21 キン肉マンII世 Round.10 (替え歌バージョン) (DVD)
2003/7/21 キン肉マンII世 Round.11 (替え歌バージョン) (DVD)
2003/7/21 キン肉マンII世 Round.11 (替え歌バージョン) (DVD)
2002/5/22 キン肉マンII世キャラクターソングコレクション 新世代正義超人の歌 [歌:小野坂昌也]
2002/12/4 キン肉マンII世マッスルベスト [歌:小野坂昌也]
備考「キン肉マンII世」のテリー・ザ・キッドとしての曲。

本来は、万太郎が歌っているキャラクターソング。 アニメ放送時、オープニング前の30秒枠で、 視聴者(主に子どもがターゲット)からの「替え歌」を募集し、それを歌っていた。 そのうち、万太郎だけでなく、ミートや他のキャラクターまで歌うようになり、 テリー・ザ・キッドも、計4回、担当した。 それぞれ、「キッド」を意識した替え歌になっていて、専用のアニメもある。
もともとがコミックソングだし、歌詞も替え歌だし、アレンジや歌い方がどうこう、 というほどの曲でもないので置いておくが、なんとなく微妙に音程がおかしいのは、 キッドのキャラクターなのだろうか(爆)。声だけはキッドの声で歌ってるんだけどなあ。 たぶんぶっつけ本番で、歌詞だけ渡されて、その場で歌ったんだろうけど。


闘えセイント・ビースト [03.09.21掲載]

作詞南出祐司
作曲堀隆
編曲河野陽吾
共演櫻井孝宏、宮田幸季、吉野裕行、杉田智和、鈴村健一 (合唱)
曲調アップテンポ、シリアス、ロック調、高めの音域
収録 2003/6/25 聖なるけものたち/闘えセイント・ビースト
2003/6/25 聖なるけものたち/闘えセイント・ビースト (off vocal)
2004/4/24 セイント・ビースト イベントDVD 3rd PARTY (ライヴバージョン) (DVD)
2005/1/28 セイント・ビースト イベントDVD ケダモノたちの聖なる宴 コンプリート版 (ライヴバージョン) (DVD)
2005/1/28 セイント・ビースト イベントDVD ケダモノたちの聖なる宴 コンプリート版 (ライヴバージョン) (DVD)
2005/6/22 Saint Best Lost.2/Vocal Best of the Saint Beast
2007/3/28 セイント・ビースト MUSIC CLIP (DVD)
備考「四聖獣〜セイント・ビースト」のひとり、青龍のゴウとしての曲。

実はこのタイトル、文字コードがないので省略しているが、 「闘え」の後にハートマークが入っている。 セイント・ビーストって、そういうやつらだったんだ。(笑)
「愛という名の嵐」と一緒で(もちろん、 メンバーは増えているが)、声が混ざる。 杉田くんの声だけはかろうじて他と浮いているが、四聖獣に鈴村くんをまぜても、 やっぱり同じだ(爆)。いや、集中してちゃんと聴けば、それぞれの声は聞こえる。 人数が多くなったぶん、振り分けていく過程で、見つけやすくなったところも、 あるかもしれない。各パートでも、誰が歌っているのか、すぐにわかるし。 でも、やっぱりコーラスパートは、より一層の集中力を必要とする。
もう既にゴウとは言えない、やわらかくやさしく色っぽい冒頭のソロパートと、 エンディング前のデュエットパートだけでは飽き足らない向きは、 コーラスパートの聴きわけをがんばってみてほしいが、 でもそれよりも、耳に吹き込まれるようにささやかれる、 心臓によくない「I love you」や「Kiss me」を追ったほうが、 森川さんの吐息混じりの声を楽しめるかもしれない。絶対にヘッドフォン推奨。 off vocalには、この合いの手(?)も入っていないのが、ものすごく残念だ。
相変わらずギターリフをきかせたアレンジと、勢いのよいメロディラインと展開は、 聴きやすく心地よい。ただ、最初から最後までずっと同じトーンとリズムで、 「ガチャガチャした」という印象は拭いきれない。 ずっとヘッドフォンでリピートしていると、お腹いっぱいになる感じ。 ちょっとあっさりした曲と混ぜつつ聴いたほうが、 ヘビーローテーションにはいいかも。
詞は観念的だが前向き。セイント・ビーストたちの「闘い」は、やっぱり、 こういう華麗さを持っていて、泥臭さとは無縁なんだ、と、 あらためて彼らの素性とかに、思いをはせてみたりした。それが、 エクスクラメーションマークではなく、ハートマークの意味、なのかもしれない。
ちなみに、カップリングのオープニングテーマの作曲は、影山ヒロノブ。 歌っているきただにひろしは、「太い」声の人ではない(パワーはないわけではないが、 どちらかというと細い)が、曲自体の野太さは、さすがミッシェルだ。 それに比べると、聖獣たちは、6人集まってもこんなに華奢なんだなあ…。


終わらない夢のひととき [03.09.14掲載]

作詞暮須華里依
作曲堀隆
編曲堀隆
曲調アップテンポ、シリアス、中音域からハイトーン、ロック
収録 2003/7/24 Saint Beast ヴォーカル&ドラマアルバム Legend of the BEAST
2003/8/22 セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜Fan Disk (イメージ映像、抜粋) (DVD)
2003/9/25 セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜I (ショートバージョン、アニメエンディング) (DVD)
2003/12/23 セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜IV (ライヴバージョン、抜粋) (DVD)
2004/4/24 セイント・ビースト イベントDVD 3rd PARTY (ライヴバージョン) (DVD)
2005/5/25 Saint Best Lost.1/Vocal Best of the Saint Beast
2005/6/15 セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜New price edition Vol.1 (ショートバージョン、アニメエンディング) (DVD)
2007/3/28 セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜スペシャルパッケージ (ショートバージョン、アニメエンディング) (DVD)
2007/6/15 セイント・ビースト イベントDVD 4th Party (ライヴバージョン) (DVD)
備考「四聖獣〜セイント・ビースト」のひとり、青龍のゴウとしての曲。

青龍のゴウのソロ曲としては2曲目。アニメ「セイント・ビースト〜聖獣降臨編〜」の、 第1話エンディングテーマとして使われた。全6話のこのアニメシリーズは、 四聖獣+放浪天使兄弟の計6人のソロ曲を、各話のエンディングテーマとしている。 四聖獣のリーダー的存在、青龍のゴウの曲が第1話で、エンディングバックは、 波の高い海。でも特にこの曲は海とは関係ないみたい。
「Fan Disk」では、 イメージビデオのようなもの(森川さん自身の映像)のバックに使われている。 同じものが「前夜祭」(キッズ・ステーションで放送)でも流れたが、 そのときにはまだ第1話も放送されていず、CDも出ていなかったためか、 発表済みの「炎の十字架」のほうが使われていた。「Fan Disk」収録のときに、 音だけ差し替えたみたい。四聖獣の他のメンバーの曲も同様。一部なうえ、 役について語るトークがかぶさったりするので、曲を聴く目的には適さない。
曲の印象は、ソロ1曲目の「炎の十字架〜ブラッディクロス〜」と同じく、 ロックテイストが強い。ギターリフも、森川さんのハイトーンも堪能できる。 メロディラインもしっかりしていてわかりやすく、歌っていると気持ちいいだろうな、 という感じ。でも、歌えそう、と思ってしまうところがアニソンぽく、 近付き難い崇高さよりも、親しみやすさのほうを強く感じる。
いちばん高いところではないところでひっくり返る、お得意のセクシーな裏声も、 もちろん何度か聴くことができる。特に、エンディング前のサビでは、 同じメロディ・歌詞の他の部分ではひっくり返らないところでひっくり返し、 せつなさを増してくれるところも、心憎い。
「終わらない」のが「夢」なのか「ひととき」なのか、 終わらなかったらひとときではないのでは、などということは、考えてはいけない(笑)。 この観念的なタイトルが象徴する、愛と憎しみ、癒すことと傷付け合うこと、といった、 願う気持ちとは相反する流れに身を任さざるをえないせつなさを、 素直に受け止めるのが、 この曲の世界にひたれるキーポイントとなるだろう。(本当かよ(笑))
この曲を、生で聴けるのだろうか。本当なら「炎の十字架」のほうが聴いてみたいが、 こっちのほうが歌いやすいだろうなあ。ノリもいいし。


Touch [03.10.12掲載]

作詞Naomi Kosaka
作曲上野浩司
編曲上野浩司
曲調ミディアムテンポ、シリアス、中音域高め、甘えたようなバラッド
収録 2003/8/22 幻想魔伝 最遊記 VOCAL ALBUM Vol.3
備考「幻想魔伝最遊記」の焔(ほむら)としての曲。

まず驚いたのが、この時期に「焔が」歌うこと。 やっと紅孩児も歌うから、ということでのバランスもあるのかと思うが、 新作放映直前に、作品上はもう出て来ないキャラが歌うのもどうか、と。 まあでも、焔ファンではなく森川ファンとしては、キャラが出て来ようが来まいが、 歌ってくれるのなら万々歳、大歓迎であることは確かだ。
そして、次に驚いたのが、ちょっと舌っ足らずな甘えたような、高めのトーンの歌声。 焔ってこういうキャラだったっけ? 久保ちゃんの甘えたような歌声を聴いたときよりも、 さらに大きな驚愕。まあでも、焔ファンではなく森川ファンとしては、 別にキャラに合っていようがいまいが、歌として魅力的なら、これまた大歓迎だ。
左から右に抜けるヒールの足音で始まり、右から左に去って終わる。 リズムセクションをはじめとして、空気が震える音の響きの感じられない、 ある意味無機質なシンセ音でのアレンジの上に、 そういう人間的な効果音の入るところが、非現実的な近未来映像を観ている感じ。 そういう意味では、自分がその世界の中にいるというよりも、 傍観者的に、完璧に作られた仮想現実を体験しているような印象を受ける。
歌詞はけっこう退廃的な面もあり、ある意味ゾクゾクするような状況のはずなのに、 言葉そのものにあまりキレが感じられないのは、 声自体が鼻にかかっているからだろうか。風邪でもひいてた? 本人も「息で歌う」と言っているぐらいだから、 わざとやわらかめにするためにそうしたのかな。 いつもの、ピーンと張りつめたソリッドな響きはほとんどなく、 なんというか、気取ったプレイボーイにめいっぱい甘い言葉で口説かれている感じ。 それはそれで心地よいのだが。
「女性ファン必聴」という本人の言を支持するわけではないが、確かに女性向きの曲。 全体的にやわらかく、ヘッドフォンなどで耳元で聴くとくすぐったい感じがするほど。 張った声でもないのに、ちゃんと声を裏返して、甘えた色気も忘れない。 これが焔か、と思うとなかなか微妙なセンかもしれないが、 「こういう歌を歌いそうな」男(顔はお好みにより森川智之でも何でも(笑))を、 自分なりのイメージで作って聴けば、いい夢が見られるかも。


ANSWER [03.09.28掲載]

作詞森由里子
作曲山田伸一
編曲勝又隆一
曲調スローテンポ、バラッド、中音域高め、ラブソング
収録 2003/8/27 アンジェリークエトワール RED
2004/2/25 ネオロマンス・ライヴ 2003 Autumn LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン、ショートバージョン) (DVD)
2004/2/25 Burning Love ネオロマンス・ライヴ 2003 Autumn (ライヴ・バージョン)
2004/12/1 アンジェリークエトワール RAINBOW
2004/12/22 アンジェリーク メモワール10th〜Sweet Celebration〜 LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン、ショートバージョン) (DVD)
2011/10/25 ネオロマンス・フェスタ12 LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン、ショートバージョン) (DVD)
2014/3/26 ネオロマンス20thアニバーサリー・イヴ LIVE VIDEO (ライヴ・バージョン、ショートバージョン) (DVD)
備考「アンジェリークエトワール」のエルンストとしての曲。

タイトルからも一目瞭然、 「QUESTION」のアンサーソングに当たる。 経験したことのなかった、自分自身の心の変化に対する戸惑いを歌った本歌に対して、 自分なりの答えを見つけた(自覚した)、といったところ。 同じようなテクノポップだと思っていたので、バラッドだったことに、ちょっと驚いた。 確かに、結論を出すことで心の安らぎを見つけたんだから、そのほうが自然かも。
しかし、歌い出しから、心を解放したのか甘えきった感じの、センの細い歌声。 エルンストの声自体が、少しずつ高めになってきているんだろうか(笑)。 残念なのは、色っぽくないこと。エルンストだから、なのかもしれないけど、 お得意のひっくり返るところもなくて、ドキドキ感が足りない。 そのぶん、静かにひたりやすい感じ。
最初から最後まで、やさしくたゆたう感じで、とても安らげる。 答えを見つけたことで、不安感もなくなり、聖母の胸に抱かれた感じ、なのだろうか。 その代わり、自分(エルンスト)と「(彼の中の)あなた」だけで世界が完結していて、 他者に訴えかけてくる感じは、まったくしない。自分がその世界の中にひたれれば、 これほどせつなくも心落ち着く曲はないだろう。同じようなバラッドの名曲に、 「蒼い静寂(しじま)〜IN THE SILENT BLUE〜」がある。 どうすることもできない痛みを胸に抱えたときには、この2曲を中心にした、 「癒し」ラインナップなどを構成して、泣きたいだけ泣くのもいいかもしれない。
曲のコンセプトに合ったうるさくないアレンジで、リズムセクションも、 しっかりと刻んでいるわりには耳につかず、アコースティックな響きが耳に心地よい。 とか言いつつ、いきなりキャッチーなところに持って行かれた感じだが、 イントロの最初が好きだったりする(笑)。


spoil [03.11.09掲載]

作詞峰倉かずや
作曲西岡和哉
編曲西岡和哉
曲調アップテンポ、シリアス、中音域から高め、へヴィでハード
収録 2003/9/26 久保×時SONGS! 私立荒磯高等学校生徒会執行部+WILD ADAPTER
2007/6/22 執行部+WA LOVE×ALL
2008/3/21 私立荒磯高等学校生徒会執行部+WILD ADAPTER LIVE GO THE LIMIT (ライヴ・バージョン) (DVD)
2012/7/25 執行部+WA WILD EXECUTION
備考「私立荒磯高等学校生徒会執行部」「WILD ADAPTER」の久保田誠人としての曲。

殺伐とした雰囲気のアレンジが真っ先に印象に残る。久保ちゃんらしくていい。 どっちかっていうと、「WILD ADAPTER」のほうの感じかな。
とても、映像を感じさせる曲。たぶん簡単に、PVのイメージ作りができるだろう。 細かいカット割り、色を抑えた映像、フェードインで重ねられていく風景、 雑踏にいながらの孤独、思い詰めた、でもほとんどを諦めている表情の若者、 希望を失っていくことがわかっていながら離れられない少女。 70〜80年代頃の、「一緒に堕ちる」ことでしか人生や愛を全うできなかった、 ちょっと退廃的な青春映画のイメージそのままだ。もちろん、音は新しいけど。
アレンジも、歌い方も、歌詞も、メロディラインも、 すべてがそういうトータルな雰囲気を作り上げている。 久保ちゃんなのか、WAなのかどうかは、ここまでくれば関係ない。 「キャラクターソング」という枠でくくりたくない。作品から離れても、 この1曲だけからストーリーが作れそうなぐらい、独自の世界を持っている感じがする。 相変わらずいい曲を提供してくれるなあ、この作品は。
重い音がズシズシと響く。メロディの展開も、その重さを引きずっていく感じで、 全然軽快ではない。歌詞をちゃんと読んでも、全く軽くならない。 どんどんへヴィに、それも心地よく沈み込んでいき、 鉛のように重たい流れの中でたゆたうことが、気持ちよくすら感じる。 バーテンの顔すら見えない薄暗いバーの片隅で、どこにも行く場所のないまま、 無駄に夜が更けていく、なんてときに聴きたい感じ。 そんな日がそうそうあっちゃ困るんだが。
森川さんのヴォーカルは、高めだが突き抜けるトーンではなく、 曲のへヴィさに合った響きと広がりのある声。 「HEAVEN'S DOOR」の頃に近いかもしれない。 それに、若者のストレートさだけでなく、少し世間を知った、 傍観者的な視点も入っているように思える。声に視点、というのもおかしい話だが、 さすが演技者なだけに、声にも「歌い手」の設定や心情が表れる感じがするのだ。 声だけ取り出してどうこう言うよりも、曲全体で聴いてほしい気がする。 この曲だからこの声と歌い方、みたいな。 それぐらい曲としてのまとまりがあり、完成度が高い、ということなんだろう。


デオキシリボ助さん [03.10.19掲載]

作詞ビーンズ豆田
作曲大城加衣
編曲清水永之
共演速水奨、高橋直純、檜山修之 (合唱)
曲調ミディアムテンポ、コミカル、ハイトーン……なんだろうな
収録 2003/9/26 Super Stylish Doctors Story 愛の解体新書I ドラマアルバム
2005/12/25 S.S.D.S. 御名刺代わり (ライヴ・バージョン) (DVD)
2007/2/14 S.S.D.S. 秋の大診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2008/3/14 S.S.D.S. 2007秋の診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2009/2/23 S.S.D.S. 2008初冬の診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2010/2/24 S.S.D.S. 2009秋の贅沢診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2011/3/14 S.S.D.S. 2010魅惑の診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2012/3/30 S.S.D.S. 2011秋もたっぷり診察会 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2013/3/31 S.S.D.S. 2012とことん診察会4 (ライヴ・バージョン) (DVD)
2014/8/31 S.S.D.S. 2014診察会 歌謡祭 (ライヴ・バージョン) (DVD)
1999/?/? Dr.HAYAMI re・lax3 (オリジナル・カラオケ)
1999/?/? Dr.HAYAMI re・lax3 [歌:速水奨]
備考「伝説のナース・としこ&のぶこ」としての曲。

もともとは速水奨の企画アルバム「re・lax×3」に収録されていた曲。 そのときにはもちろん、Dr.HAYAMIがひとりで歌っていたわけだが、 今回、「Super Stylish Doctors Story」になるにあたって、 「伝説のナース」としこ・のぶこと、若き新米医師・新田和人が参加。 といっても、台詞とか合いの手とかで、歌はコーラスだけだが。
トラックを選び、再生を始めると、新田くんの独り言に、 としこ・のぶこがからむ台詞から始まる。歌だけ聴く場合には、1:06あたりから(笑)。 としこ・のぶこに関しては、歌に入っても似たようなものだろうけど。
曲自体は、「デオキシリボ核酸」の「核酸」を「助さん・格さん」にひっかけたもので、 「デオ」から連想するバナナボートのモチーフを使った、パロディ仕立て。 曲調と使われているモチーフから、コミックソングなところばかり強調されるが、 それでも、歌詞をきちんと聴くと、それなりに凝っていて、面白いかも。
森川ファンとしては、としこ・のぶこの合いの手(?)とコーラスが気になるところだが、 あのナースたちがここまで出世(?)するとは。何回も聴いていると、 左耳からののぶこと、右耳からのとしこの声ばかり聞こえるようになる(笑)。 それほどひっきりなしに合いの手を入れている、ということになるかな。 もちろん、「森川さん」のハイトーンだの何だのを期待するほうが無茶だが、 イロモノ好きの方には、聴き込み甲斐があることだろう。
それにしても、としこ・のぶこはともかく(!?)、直純くんはもったいないなあ。 もっと歌わせてあげたかった感じ。新田くんはかわいいけど。


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